第34章 最終決戦 上弦の弐
陽華はゆっくりと呼吸した。ようやく取り込めた空気が、体中に巡る。
止血はした。血は少し出すぎたけど、もう問題ない。
その場にゆっくりと、立ち上がると刀を構え、童磨を静かに睨み付けた。その姿を見ていたカナヲが陽華の変化に気付き、声を掛けた。
「陽華さん、痣が…、」
いつの間にか、陽華の首から顎に掛けて、氷晶のような痣が、浮かび上がっていた。
次の瞬間、陽華は鬼に向かって勢いよく駆け出した。
ー 氷の呼吸・壱の型
「氷輪!!」
勢いよく振り抜かれた刃が、初めて童磨の頚に触れた。しかし数センチの切れたところで、童磨は身体をのけ反らせ、攻撃を防いだ。
童磨は扇を振るい、氷の粒を撒き散らした。
ー 血鬼術・蓮葉氷
「参の型・乱れ吹雪!」
刃を返し、斜めに放った陽華の技が、猛吹雪のような爆風を放ち、童摩の血鬼術を吹き飛ばした。
吹き飛ばした爆風を隠れ蓑にして上へと飛ぶと、再び童磨の能天目掛けて、大きく振りかぶった。
ー 肆ノ型・烈氷刃
その攻撃は童磨の腕を薙いだ。血飛沫を上げて童磨の腕が吹き飛んだ。しかし童磨は焦る様子もなく、残った方の手に握った扇を陽華に向かって振り下ろした。
陽華はそれを横に身体を捻って躱すと、くるりと身を返して、今度は横薙ぎに刀を振るった。
その攻撃は童磨の胴を深く薙いだが、童磨は物ともせずに、次の攻撃を繰り出した。
ー 血鬼術・散り蓮花
大きく振り上げられた扇子から鋭い氷の花弁が放たれ、陽華はそれを避けるように後ろに飛んだ。
冷たい氷の刃が陽華の肌を傷つけたが、痛みは感じなかった。
童磨から距離を取って、刀を再度構え直す。
童磨は微笑みながら陽華を見ると、切られ掛けた首から流れた血を拭った。薙いだ腕や胴はもう再生していた。
「ははっ!格段にスピードが上がってる、痣のおかげかな?危なかったよ。…目測を誤って、もう少しで、頚を切られるところだった。」
少しも焦る様子もなく、楽しげに陽華に笑い掛けた。