第34章 最終決戦 上弦の弐
しのぶの最後の一撃は、童磨に大きな打撃を与えることも出来ずに終わった。童磨は堕ちていくしのぶの身体を蔓で絡めとると引き寄せ、ぎゅっと抱き締めた。
「えらい!頑張ったね!君は俺が喰うに相応しい人だ。永遠に共に生きよう!言い残すことはあるかい?聞いてあげる!」
童磨が涙ながらにそう言うと、しのぶは怒りと嫌悪感に、最高の侮蔑を込めた辛辣な言葉を浴びせかけた。
「地獄へ堕ちろっ!」
バンッ!
その時、勢いよく扉を開けて、カナヲが部屋に入ってきた。
「師範!!」
ゴキッ!
辺りに、骨が潰れたような鈍い音が響き渡った。
駆けつけたカナヲと、陽華の目の前で、しのぶは絶命した。
次の瞬間、カナヲが怒りで童磨に斬りかかったが、童磨はそれを軽く躱した。
「いやー、危ない危ない。吸収してる最中に、斬りかからないでおくれよ。」
ゆっくりとしのぶの身体が、童磨に取り込まれていく。
「あ…、し…のぶ…、」
陽華はその全てを、親友がゆっくりと鬼に取り込まれていく瞬間を、何も出来ずにただ見ていることしか出来なかった。
悲しいよりもまず、自信の非力さと鬼への怒りが身体全体を支配した。
怒りで痛みも感じない。ただ身体中が燃えるように熱かった。鼓動が、脈が、早鐘のように騒がしく波打ってる。
胸が苦しい。
また大切な人を殺された。また大切な人を守れなかった。
後何回、この悲しみを繰り返せば、終わらせることが出来るのか…。