第33章 最終決戦 序
夜の帳が下り、辺りが闇に包まれた頃、その伝令は下された。
突如、静かな夜空に、無数の鴉が飛び立った。
「緊急招集ーーーッ!産屋敷邸襲撃ッ!!」
鎹鴉によって鬼殺隊本部にいた隊士全員に出された緊急招集。
冨岡邸にいた陽華達三人も、急いで産屋敷邸に向かった。
(お館様…お願い、無事でいてっ!)
産屋敷邸まであと少し。陽華がそう願ったその時だった。
ドンッ!!
静かな鬼殺隊本部に、突然響いた大轟音。
立ち昇る黒煙と、空を照らす赤い炎の揺らめき。
それを見た全員が、息を飲んだ。
「あれは、お館様の屋敷の方角…、」
陽華が声を震わせて言うと、義勇は厳しい顔で陽華と炭治郎を見据えた。
「急ぐぞ!」
陽華と炭治郎は頷くと、黒煙の昇る方、産屋敷邸への道を走った。
揺らめく炎が照らす道を走りながら、陽華の脳裏には、出会った頃に向けられた、お館様の笑顔が昨日のことのように過っていた。