第33章 最終決戦 序
義勇の屋敷へと続く深い竹林の道。家まであと少しのところで陽華は、今度は道端に体育座りで座り込む義勇と炭治郎に会った。
「道端で何やってるの?二人で座り込んで。」
「あっ、陽華さん!こんにちは。」
陽華が声を掛けると炭治郎は嬉しそうに立ち上がり、ぺこりとお辞儀した。
それを見ながら義勇も立ち上がり、ズボンに付いた砂埃を払いながら、状況を説明した。
「炭治郎が不死川にブッ飛ばされたから、看病していた。」
「ああ、そう言えばちょっと前に実弥とすれ違ったけど、めちゃくちゃ切れてたよ。またなんかやったの、義勇?」
陽華が呆れた顔で問いかけると、義勇は心外そうな顔で陽華を見た。
「俺じゃない。怒らせたのは炭治郎だ。」
「いや、俺も怒らせたつもりはないんですけど…、なんで怒ったのかな?」
義勇と炭治郎が不思議そうな顔で首を傾げるのを見て、陽華はなんとなく、二人で怒らしたのだろうと察した。しかし、そのあと自分も何故か怒らしたことは言わなかった。
「ほらっ、もう日が暮れるから帰ろう?炭治郎もうちでご飯食べてく?」
「いいんですか?陽華さんの手料理かぁ、楽しみだなー。」
「え?弟弟子なんだから、炭治郎が作るに決まってるでしょ。」
「…え?あぁ、そうですよね。わかりました!」
冗談で言ったのに、真剣な顔で鵜呑みにする炭治郎に、陽華は思わず笑ってしまった。
「そう言えば、師匠も来てるのよね。」
「あ、はい。禰豆子の様子を看てくれてるみたいです。」
陽華の問いかけに炭治郎が答えた。
禰豆子の居場所は現在、鬼殺隊の中でも最重要機密として厳重に守られている。いかに親しい者でも決して立ち入ることは許されていなかった。
「今度は、師匠も禰豆子も一緒にご飯食べたいね。」
陽華が笑顔でそう言うと、炭治郎も嬉しそうに「はいっ!」と答えた。
そのまま三人は、暗くなっていく竹林の道を楽しく話ながら、帰路についた。