第33章 最終決戦 序
近くの岩場に腰を落ち着けた陽華は、旁に置いてあった竹筒の水を飲み干した。
冬の冷たい風が火照った身体に心地よく感じる。陽華は一息つくと、しのぶに視線を合わした。
「どう、例の件は順調?」
「ええ、詳しいことは言えませんが、予想以上の物が出来ました。」
そう言って、しのぶは陽華の横にゆっくりと腰かけた。
しのぶは今、鬼舞辻と敵対してる鬼と協力してある研究をしている。
このことは鬼殺隊の最高機密として、柱の中でも限られた者しか知らなかった。もちろん、陽華も全てを知っているわけではなかった。
大事な研究が大きな成果を上げたのに、しのぶの顔は決して晴れやかではなかった。
「…にしては、あんまり嬉しそうじゃないけど?」
陽華の問いかけに、しのぶは苦笑いを浮かべた。
「自分から共同開発を提案しましたが、あの方に会って、私は自分の無力さを思い知りました。…私一人の力じゃ、造り上げることは到底出来なかった。」
そう言ってしのぶは遠くを見つめ、ため息をついた。陽華はそんなしのぶの肩に手を回すと自分の方に引き寄せた。
「しょうがないよ。生きてる年月も、鬼の生態についての知識だって、本物の鬼には敵わないでしょ?それに…その人だって、一人じゃ出来なかったかもよ?だって、二人で完成させたんでしょ?」
その言葉にしのぶは、目から鱗が落ちたかのような表情で陽華を見た。そんなしのぶに陽華は優しく微笑みながら言った。
「だから私は、しのぶを心から尊敬する。自慢の親友だよ。」
「陽華っ!」
しのぶは胸が熱くなって行くのを感じ、堪らずに陽華を抱き締めた。
「お嫁さんに欲しいです。」
「ダメよ、先約済みだから…。」
「え、まさかっ!?」