第32章 宴
「師匠、二人で帰ったら、どんな顔するかな?大人三人じゃ、あの小屋は狭そうだね。」
陽華はあの小さな小屋を思い出して笑った。小さかった子供の頃は気にならなかったが、二人ともずいぶんと成長してしまった。
義勇も流石にそう思ったのが、少し考えると思い付いたように提案した。
「じゃ、隣にもう一軒建てるか。…ほら、鱗滝さんがいたら、色々としづらいからな。…営みとか…、」
「…もうっ!」
「それに…、後何人増えるか、わからないからな。」
「え…、他にいるの?」
「結婚したら、家族って増えるものだろ。」
義勇が少し照れたようにそう言うと、陽華はやっと気づいたように口を開いた。
「っ!私と義勇の子供!?」
陽華の顔がみるみる赤くなっていった。そんな可愛い反応を見せる陽華に、義勇は堪らなく愛しさを感じた。
「…家族を失った俺たちが、新しい家族を作るんだ。おまえがいれば、きっと明るい家庭になる。……鬼なんか知らない、ずっと笑顔の耐えない、そんな家族を作りたい。」
そう言って、義勇は優しく笑い掛けた。義勇と子供達が笑い合う、そんな未来を想像して陽華は顔を綻ばながら、義勇に笑い返した。
「うん、素敵だね。」
「お前はきっと、いい母親になるな。」
「ふふ、ありがとう。義勇だって……、」
陽華はそこまで言って、考え込んだ。
「なんで、そこで黙るんだ。」
「…ごめん。だって、改めて考えると父親姿の義勇なんて…想像つかない。」
そう言って、吹き出しそうになる陽華を、義勇は心外そうな顔で睨んだ。