第32章 宴

義勇は頬に触れた陽華の手を握り返すと、ちょっと恥ずかしそうに目を反らしながら、

「それ以外、あるか？」

と、呟くように言った。

「ふふ、照れてる。」

嬉しそうに微笑む陽華の瞳から涙が溢れ、静かに滴り落ちた。義勇はその涙を指で優しく拭うと、こう言った。

「あの最終選別の後、お前がいなかったらきっと、俺は立ち直れなかった。お前が俺の傍でずっと笑っていてくれたから、頑張れたんだ。」



ー 陽華はいつも傍にいてくれた。どんなに突き放しても、どんなに後ろ向きな発言を繰り返しても、呆れずにどんな時でも、その暖かい笑顔を俺に向けてくれたんだ。



「俺はこれから先もお前がいないと駄目だ。だから、ずっと俺の傍にいてくれ。…どうだ、承けて…くれるか？」

義勇は少し緊張したように顔を強ばらせて、陽華に見つめた。陽華はそんな義勇に、満面の笑みで微笑み掛けると、

「はい、宜しくお願いします。」

と答えた。

そう答えた瞬間、義勇は陽華を強く抱き締めていた。

「義勇、苦しいよ！」

そう言いながらも、陽華は義勇の胸に顔を埋めて、嬉しそうに抱き締め返した。