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【鬼滅の刃】水魚之交

第32章 宴





義勇は暫く無邪気に笑う陽華を、愛おしい気持ちで見ていたが、ふと考え込むように表情を強ばらせた。

そして、意を決したように陽華に喋り掛けた。

「陽華、一つ約束してほしいことがある。」

そう言った義勇の顔が優しく微笑んでいるのに、どこか泣いてるように見え、陽華には義勇が今から何を言おうとしているのかが分かった。

「やだ…、聞きたくない。」

「陽華、頼む…。」

懇願するように見詰めてくる義勇の瞳を、見ないよう陽華は顔を反らした。

「お願いだ、聞いてくれ。」

義勇の悲痛に訴える声に、陽華は堪らずに義勇の顔を見た。義勇は陽華の目を真っ直ぐ見詰めると、言葉を続けた。

「陽華、約束してくれ。…もし、俺たちのどちらが生き残ることがあるなら、残った方はけして自ら、命を絶たないと…、残りの人生を全うすると…、誓って欲しい。」

「…だめだよ、義勇。…私、出来ない…よ。」

陽華は両手で顔を覆い、小さく嗚咽するように肩を震わせた。

「俺だって、無理だ!…だが、」

義勇は陽華を強く抱き締め、その耳元で絞り出すように囁いた。

「…今生で叶わなくとも、来世でまた、お前に会いたい…。」

そう言った義勇の身体は微かに震えていて、気持ちが痛いほど伝わってきて、陽華は心が締め付けられそうだった。

(義勇も辛いんだ…。悲しくて…怖いんだ。私と同じなんだ。)

陽華は優しく義勇を抱き締め返した。義勇の首筋に擦り寄るように顔を埋めると、震える声で伝えた。

「義勇。…わかった、約束する。」

その言葉に義勇は安心したように、陽華に優しく微笑み掛け、その唇に自分の唇を重ねた。



「陽華、愛してる。」

「私も、愛してるよ。」



その夜、二人はお互いの温もりを確認するように、抱き合いながら眠りに着いた。



けして、その温もりを忘れることの無いようにと。



ー 宴 完
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