第32章 宴
帰り際、宇髄家の門を出た辺りで、実弥が義勇に声を掛けた。
「おい、冨岡。約束、わすれんじゃねーぞ?」
「……承知した。」
真面目な顔で言う実弥に、義勇は穏やかな表情で答えた。
犬猿の二人が約束?
気になった陽華は実弥がいなくなった後、興味津々に義勇に問いかけた。
「何、何?…何の話し?」
「男同士の秘密だ。」
そう言って義勇は軽く笑うと、屋敷に向かって歩きだした。
「えー、ずるいっ!」
そう言って陽華は、先に歩きだした義勇の後を追いかけた。
屋敷までの夜道をよろめきながら歩く義勇を見て、慌てて陽華は、横から義勇を支えた。
「大丈夫?飲み過ぎじゃない?」
「こんなに飲んだのは初めてだ。大丈夫、足元は覚束無いが意識ははっきりしている。」
義勇は満足そうにムフフと微笑んだ。そんな義勇に陽華は問いかけた。
「結局、勝負はどうなったの?」
「…俺が負けた。」
「え?」
意外そうな表情を浮かべた陽華に、義勇は不適な笑みを返すと、こう言った。
「不死川と伊黒が、どうしても負けたくないようだったから、負けてやった。」
「そうなの?」
「それに俺に出された課題は、近々実行しようと思っていたからな。」
「なんだったの?」
「それが、不死川との約束の中身だ。」
「えー?じゃあ、秘密?」
「近いうち言う。」
義勇はそう言い、優しく微笑んだ。