第32章 宴
「きゃー!!不死川さん、コップが割れて…、て、手から血がっ!!」
実弥の隣に座っていた蜜璃が驚いて、割れたコップを握りしめる実弥の手をおしぼりで抑えた。しかし実弥はその手を振り払うと、おもむろに立ち上がり、叫んだ。
「冨岡ァー!今日こそ、決着つけてやらァー!こっち、来ォいっ!!」
義勇は実弥の方に目をやると、呆れたように言った。
「ずっと前から言おうと思っていた。おまえは常に誰かに、勝負を挑んでいないと気がすまないのか?」
「うるせェー!いいからァ、こっち来いやァ!」
実弥は義勇に近づくと、その襟首を掴んで引きずるように連れて行った。
「止めなくて、いいんですか?」
その様子を黙ってみていたしのぶが、陽華に尋ねた。
「まさか、この席で暴力沙汰にはならないでしょ?…義勇も楽しそうだし、いいよ。」
「あれ、楽しそうなんですか?」
無表情で連れて行かれる義勇を見ながら、しのぶが言った。
実弥は義勇を連れていく傍ら、蜜璃としっぽりと飲んでいた小芭内の襟首を捕まえると、
「おらっ、伊黒ォ!おまえも来いっ!」
と引っ張った。
「は?…俺は甘露寺とっ…、」
「いいから、来いって言ってんだァ!」