第32章 宴
お酌が一段落ついて、自分の席に戻ろうとした陽華は、床の間の地袋の上に飾られてる写真に気付いた。
「あっ、この写真…。」
陽華は近づいて、写真を手に取った。すると、みんなを盛り上げようと各席を回っていた天元が、気付いて近づいてきた。
「あぁ、それな。柱が久しぶりに人数揃った記念に、お館様に言われて撮ったやつだ。」
お館様を中心に、現柱達が写っている。もちろん、陽華も持っている。
お館様に言われて、ほとんどの者が不本意ながらもぎこちない笑顔を浮かべている。そんな中に陽華は、端の方で居心地の悪そうに、横を向いている義勇を発見して思わず微笑んだ。
(この頃は、自分は柱じゃない。の一点張りだったもんね。)
さらに写真を見渡して、陽華はお館様の後ろ隣にいる人物に目を止めた。
「フフ、杏寿郎もいるね。」
「あぁ、あいつも柱なんだから、参加させてやらねーとな。」
そう言った天元に、陽華は嬉しそうに微笑んだ。
「天元さんのそういうところ、大好き。」
「今さら俺に惚れても、もう冨岡の手垢付きのお前は、四番目には入れてやらねーぞ?」
べーっと舌を出す天元に、陽華は「それは残念。」と言って、小さく笑った。