第30章 ※お仕置き
「うん。お舘様に借りた資料を返しに行く途中で会ったから、運んで貰ったの。」
思い出したように、陽華が答えた。
「…楽しそうだった。」
「そう?…いつもと変わらないと思うけど。」
悪びれる気配もなく陽華が答えると、義勇は訝しげな目で陽華を睨んだ。
「前々から言おうと思っていた。おまえは隙がありすぎるっ!!」
「……スキ?」
陽華が首を傾げた。
「誰でも友達みたいに話しかけて……、宇髄家には頻繁に行くし、伊黒にはいつの間にか下の名前で呼ばれてる。」
「天元さんは、お嫁さん達がいるでしょ!?小芭内は…最近なんとなく、気があって。」
「この間は時透に抱きつかれて、嬉しそうに頭撫でてあげていたし、悲鳴嶼さんの肩を、楽しそうに揉んであげていた!その前は茶屋で、村田と茶を飲んでた。」
「…むいくんは、まだ子供でしょ。行冥さんは、肩揉んであげてたら、すごい親父臭いこと言うから、つい笑っちゃったのっ!!村田は久しぶりに任務先で会ったから、話が弾んじゃっただけだし。……ん?見てたなら、声掛ければいいじゃないっ!」
「思えば昔からそうだった。煉獄には求婚されているし、錆兎の時もそうだ。」
「錆兎?」
「俺よりも圧倒的に、錆兎に笑い掛ける回数の方が多かった。あれじゃ、誤解するに決まっている!」
「あぁ…、そうだったかも。」
陽華は心当たりがあるかのように頷くと、突然の恥ずかしそうに目を伏せた。
「だって子供の頃から義勇って可愛くて、顔を見るとドキドキしちゃって、まともに見れなかったんだもん。」
陽華の何年かごしの告白に、今度は義勇の顔が赤くなった。義勇は打ち消すように、顔を横にブンブンと降るとこう言った。
「それは今はいいっ 。俺が本当に言いたいのはっ……、」
義勇が何か訴えるような目で、陽華の顔をチラッと見た。