• テキストサイズ

【鬼滅の刃】水魚之交

第3章 帰郷





・・・・・・


「と、そんな感じで今のところ、全て凪ぎられてます。」

と、目の前に座る師匠に向かって陽華は、涙目で報告をした。

落ち込む陽華の姿を見て、鱗滝もまずいと思ったのか、慌ててフォローを入れた。

「義勇は不器用な男だ。どうしていいのか、戸惑ってるだけかもしれん。」

「師匠…。でもですよ、時間くれって、結構な時間が経ってるんですよ。あいつ、いつまで考えるつもりなんですかね?」

言葉では悪態を付きながらも、泣きそうに視線を落とす愛弟子に、鱗滝は近づき、片手でその頭を自分の懐に引き寄せた。

その暖かさに、我慢していた涙腺が弛み始める。

「お前の強みは、持ち前の明るさだ。お前が笑っていれば、義勇にもいつか届く日が来る。」

そう言って、頭を撫でてくれた。

鱗滝の家に来たばかりの頃、鬼に殺された家族のことを思い出して、夜中に泣いたことがあった。いつも厳しかった師匠は、その日だけは優しく抱き締め、陽華が寝付くまで、ずっと頭を撫でてくれた。

そんなことを思い出しながら、しばらくの間、陽華は師匠の胸で静かに泣いた。





「ほら、食べろ。」

そう言って鱗滝は、ようやく落ち着いた陽華に器に取った鮭大根を渡してきた。陽華はそれを両手に受けとると中身をじっと見つめた。

「師匠、鮭大根…。」

陽華はそう呟いて、何で今、これを出した?とばかりに鱗滝を恨みがましく見つめた。
その目線に鱗滝は慌てふためきながら、

「しょうがないだろう。たまたま作ってたんだから!」

と、言い返した。

「食べたくないなら、食べないでいい。」

そう言ってふて腐れる鱗滝に、陽華は半ばキレ気味に、

「食べますけど!!」

と、言い返し、鮭大根を一口食べた。しっかりと味の染みた鮭大根は、あの頃とまったく変わってなくて、鱗滝の優しさとともに心に染み込んだ。

また溢れだしそうな涙をぐっと堪えながら、無我夢中で鮭大根を掻き込んだ。





/ 550ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp