第3章 帰郷
暗い森を行くと、鼻の利く陽華は、すぐに鬼を見つけた。傍には、絶命した隊員達が数名横たわり、鬼の食事と化していた。
(…本当に、胸糞が悪いわね!)
最初から機嫌が悪かった陽華は、その光景に、吐き気とともに激しい怒りが沸いてきた。
「そこの屑野郎、そこまでにしときなさいよ。」
陽華の声にゆっくりと振り向いた鬼の目がキラッと光った。
下陸
目に刻まれた階級を示す数字に、陽華は思わず舌打ちしそうになった。
「もう!倒しても倒しても、すぐ補充される!」
陽華の言うとおり、下弦の陸は最近倒したばかりだった。
まぁ、最近補充された十二鬼月なんて雑魚だろう。陽華は刀を構え、呼吸を整えた。
ー 氷の呼吸 壱ノ型 氷輪
弧を描くように抜刀した剣撃が、氷の刃となって、鬼の頚に迫る。
刃は鬼の頚を狙ったつもりだったが、鬼はすんでのところでかわし、腕だけを掠め取った。
鬼の手が飛び、辺りに血飛沫が舞った。
「チッ!」
今度は本当に舌打ちが出た。だが、次の瞬間、腕とともに弾け飛んだ鬼の血飛沫が、鋭い刃のようになって、陽華を襲ってきた。
血鬼術!?
向かってきた全ての血刃を、刀で防いだが、その間に鬼は、陽華からかなりの距離を取っていた。
陽華は鬼に向けて、刀を構え直すと、この鬼の血鬼術について、頭を働かせた。