第23章 弟弟子
会話が一段落着くと、実弥は陽華の様子を伺うように問いかけた。
「お前、もう稽古終わりだろ?…夕飯、一緒に喰わねェか?」
「んーどうしよ。もう遅いし、町までは行きたくないしなー。」
「じゃ、俺んち来るかァ?なんか適当に作ってやるよ。」
「えー?実弥、料理出来るの?」
「俺は七人兄弟の長男だぜ?働きに出てるお袋の代わりに兄弟達に作ってたんだ。得意な方だァ。」
「そうなんだ。じゃ、ご馳走になっちゃおうかな。」
そう答える陽華の声が聞こえくると、炭治郎の首に回った、義勇の腕に力がこもった。
「ぐぁっ…!」
炭治郎は落ちそうになる意識を寸前で保つと、激しく義勇の腕を叩いた。炭治郎の存在を思い出した義勇は、「あ、すまん!」と力を緩める。
炭治郎は義勇から離れると、荒く息を吐き出した。
(義勇さんから、悲しみや嫉妬、焦燥、いろんな感情が入り混じった匂いが、すごいしてくる。)
炭治郎が離れた後も、義勇は二人のことを真剣な顔を見ていた。
こんなところで誰かが、自分たちを見てるとは知らずに、実弥は楽しそうに会話を続けた。
「上手い酒があんだ、出してやるよ。」
「やった♪」
そう楽しそうに笑い合いながら、二人は義勇達とは反対の方向に歩き出した。二人の姿が見えなくなると、炭治郎は義勇の顔を見た。
「追いかけなくて、いいんですか?あれって、…浮気とか…じゃ?」
炭治郎が、気まずそうに義勇に問いかけると、義勇は意気消沈とした顔で項垂れたまま、静かに答えた。
「俺はもう、陽華の恋人じゃない。」
「え!?」