第23章 弟弟子
「義勇さーん?」
炭治郎がお館様に言われ、冨岡義勇に付きまとって二日目。ほんの一瞬目を離した隙に、炭治郎は義勇を見失った。
しばらく探していると、どこぞの屋敷の塀にへばりつき、向こう側の様子を伺う、義勇の姿を発見した。
「あっ、いた!ぎゆーさーんっ!……んぐっ!」
声を掛けながら近づくと、炭治郎に気づいた義勇は、炭治郎の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。首に手を回し拘束し、口許を抑えると耳元で囁いた。
「…静かにしろ。」
訳がわからず、義勇の腕の中でもがく炭治郎の耳に、男女の話し声が聞こえてきた。
(あっ、陽華さんの声と……風柱の人?)
炭治郎は義勇に抑えられながらも、横から塀の向こう側に顔を覗かせた。そこにあったのは陽華と風柱・不死川実弥が楽しそうに話をしている姿だった。
「実弥の稽古、不評だよ?みんな、地獄だって言ってる。」
「アァ?どいつもこいつも、根性がねェーんだよっ!あんなんで根を上げてるから、下弦でさえ、倒せねぇんだっつーのっ!」
悪態をつく実弥の横で陽華が笑った。そんな様子を見て、実弥が言った。
「お前のだって、評判いいわけじゃねェだろ?可愛い顔して、やることが鬼畜だって、俺のとこに来た隊士が言ってたぜ?」
「えーひどい。だって呼吸の強化は必須でしょ?なのに、常中すら出来てないのが大半なのよ。そりゃこっちだって、熱くなっちゃうよ。」
そう言って笑い合う二人の姿を見て、炭治郎は仲がいいんだな。と思った。
それと同時に炭治郎の頭の中には、こんな所で、隠れるように二人を見ている、うちの兄弟子は何をしているんだろうか?という、疑問が沸いた。