第22章 柱合会議
「錆兎…代わり?何でそこで、錆兎が出てくるの?……まさか、私が錆兎のことを、好きだったと思ってるの?」
「お前は昔から、錆兎と仲が良かった。あの選別で、俺がもっとしっかりしていれば、お前から錆兎を…幸せを奪うこともなかった。…だから、俺はアイツの代わりに…、」
やっと全てが繋がった。
義勇の優しさや行動の意味も、ずっと傍にいてくれた理由も。すべては贖罪の為だったんだと。
「……なによ、それ。」
陽華は失笑ぎみに小さく笑うと、義勇に視線を合わせ、寂しげに微笑んだ。
「…全然、違うよ。私がずっと好きだったのは錆兎じゃない。私は出会った頃からずっと、義勇が好きだった。」
少しくらいは自分の事、好きでいてくれてると思っていた。…でも、義勇にはそんな気持ち、微塵もなかったんだと、突きつけられた。
「狭霧山での、あの辛い修行の日々だって、貴方の笑顔と励ましがなかったら、とっくに鬼殺隊に入るなんて、諦めてたよ。」
陽華はそこまで一気に言うと、手の甲で涙を拭い、下を向いた。もう、義勇の顔が見れない。
「錆兎は貴方にとって憧れで、眩しく輝いてる存在だったのかもしれないけど、私には義勇、あなたの優しい笑顔が、いつも眩しく輝いて見えてた。」
義勇がハッとしたように、目を見開いた。
「だから気持ちを伝えた時、それに答えてくれて、震えるくらい嬉しかったんだよ。でも義勇は違ったんだね。あなたが私と一緒にいてくれたのは、私から錆兎を奪った罪悪感からだったんだ。」
「ちがっ…、」
陽華に触れようと義勇は手を伸ばした。しかし、その手が触れることはなかった。陽華が拒否するように、後ろに一歩下がったからだ。
「ううん、いいの。もう解放してあげる。義勇、私の恋人ごっこに付き合ってくれてありがとう。……さよなら。」
涙で濡れた顔で微笑み、陽華はその場から走り去った。
義勇には追いかけることが出来なかった。
自分が錆兎の代わりだと思っていたのは、間違いなかったから、自分には追いかける資格がない。
(それに…俺はまだ…、)
義勇はその場に立ち尽くしたまま、遠ざかっていく陽華の後ろ姿をただ見つめることしか出来なかった。