第21章 ※刀鍛冶の里
陽華は全てを書き消すように唇を貪った。義勇もそれに答えるように腰の動きを再開させた。
陽華は今の出来事を忘れようと、与えられる快感だけに集中した。次第に快感が頂点に達していく。
「んぅ、あっ、ぁん、も…だめ、イっ…んぁ!」
陽華の身体がビクンッと大きく跳ねたかと思うと、しがみついた義勇の身体に回した腕に力がこもった。それを確認すると、義勇は陽華の中から自身を引き抜き、外の土の上に白濁した液体をぶちまけた。
義勇は呼吸を整えると陽華の方を見た。陽華は崩れるように湯船に座り込んでいた。義勇が近づき、声を掛けようとすると、突然立ち上がった。
「私、少しのぼせちゃったみたい。先に上がるね。」
そして義勇を一瞥することもなく、走り去っていった。
義勇は陽華が出ていった扉を、暫く見ていたが、ふーっと深い息を吐くと、岩場に座り込んだ。
ー 俺も好きだ。
あの時、伝えようとした言葉。でもその一言がどうしても出てこなかった。
言ってしまったら、今まで張っていた虚勢が崩れてしまいそうだった。自分はまだ何者にも成れていない。錆兎に誇れるような存在にも…、自分にさえも…。
「最低だな…。」