第3章 帰郷
「…義勇は相変わらずか?」
ちょうど名前が出てきたことで、話題はもう一人の弟子、義勇のことになった。
「はい、変わらずです。いや…大人になって、より頑固になったかも?」
「そうか…。義勇が継いでくれるなら、わしはもう引退しようかと、思ってるんだがな。」
「すいません。不肖の弟子達で…。」
ペコッと頭を下げた。水柱という肩書きを持ちながら認めない義勇と、呼吸を変えた陽華。
少なからず、鱗滝には罪悪感を持っていた。
若干、表情の曇った陽華の気持ちを汲み取ったのか、鱗滝は話題を変えようと、一つの咳払いをすると、
「それで、義勇とはどうなんだ。」
と、切り出してきた。
鱗滝には、一番初めに手紙で報告をしていた。その後、定期的に届く手紙に、この話題が全然触れられないので、鱗滝は結構心配していた。
「師匠、それ聞いちゃいます?」
陽華がチラッと、鱗滝に視線を合わせた。実際にはお面が……略。
その表情に不穏な空気を感じ、鱗滝の喉からコクリと音がした。
あの義勇相手に、惚気られることはないとは思っていたが、愛弟子の落胆ぷりは、想像を遥かに超えていた。
「…やはり、駄目だったか?」
「…はい、進展どころか、後退してます。」
交際宣言ののち、義勇に会えたのは、この一年で数回だけ。まず、柱は忙しすぎた。それでも当初は優しくしてくれた…でもあの柱合会議の時以来、避けられてる。
「普通に避けられてます。…すごく、壁を感じる。」
そう言って、今度は陽華の目が遠くなった。
…そう、ついこの間会った時もそうだった。