第21章 ※刀鍛冶の里
「ねぇ、義勇。」
陽華は後ろ向きで、義勇に近づいた。その気配を感じ、義勇の体がビクッとした。
「なんで、近づくんだ。」
「なんで?今さら問題ないでしょ?あっでも、やっぱり恥ずかしいから、こっちは見ないでね!」
(なんだ、それはっ!)
義勇はそう突っ込みたい気持ちをグッと堪えると、小さく深呼吸した。
すぐ後ろに、手を伸ばせば届く場所に一糸纏わぬ陽華がいる。
最近の自分は、本能のままに行動し過ぎた。このままではいけないと、義勇は平常心を保つことのみに全集中した。
「温泉、気持ちいいね。私、鬼殺隊を引退したらここに住もうかな。」
「唐突になんだ?」
「だって温泉はあるし、ご飯は出てくるし。」
「それは柱だから、里の人達が優遇してくれるだけだ。住むならそれなりに役にたたなきゃ、すぐに追い出されるぞ。」
「…確かにね。」
そう言って、陽華は小さく笑った。
「義勇は考えてるの?引退した後。」
陽華の問いかけに、義勇は少し考えると、
「…帰るだろうな、挟霧山に。」
そう呟いた。
「鱗滝さんも年だ。恩返しも含めて、面倒みてやらないと。」
「そうだね。…でもその頃、生きてるかな、師匠。」
「失礼なことを言うな。」
義勇の冷静な突っ込みに、陽華は「すいません。」と素直に謝った。それから陽華はチラッと義勇を見た。そして、こう問いかけた。
「ねぇ、私も一緒に帰っていいかな?」
「あそこがお前の帰る場所だと思うなら、帰ればいい。俺に聞くな。」
言い方はぶっきらぼうだったけど、これから先もずっと一緒にいても構わない。そう言ってくれたようで、嬉しくなった。