第20章 蛇柱
廊下の先には、電気室と書かれた扉があった。小芭内は目で陽華に合図を送ると、ゆっくりと扉を開けた。
そこは広がっていたのは、異様な光景だった。左右の壁を肉塊のようなものがうごめき、その肉塊が下に敷き詰められた血管のような管を通り、中央にそびえ立つ肉の柱に吸収されていく。恐らく、この建物内で食った人間の養分をああやって運び、本体に送っているのだろう。
「…たぶんあれが鬼の頸…。」
陽華が中央の柱の部分を指差すと、小芭内はそこに向かって走り出した。敵ももちろん、黙って見てるわけじゃない。今までにないくらいの異常な数の触手生物達が小芭内の行く手を阻んだ。
小芭内はそれを切り付けながら、陽華に向かって言った。
「俺が引きつけるから、お前は頸を!」
「了解!」
陽華は小芭内とは、反対方向に走り出した。壁伝いを走り、鬼の頸へと近づいた。途中、何度か触手の攻撃が襲ってきたが、縦横無尽に動く小芭内の技がそれを防いだ。
「小芭内、ありがとう!!」
陽華は鬼の頸までたどり着くと、深く息を吐き、刀を構えた。
「氷の呼吸 肆ノ型 裂氷刃!!」
陽華が放った一撃が、鬼の頸を斜めに一刀両断した。
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁ!!」
鬼の断末魔と共に、まるで氷山が崩れ落ちるかのように、頸は轟音を立てながら崩れ落ちて行った。
陽華は一息吐くと、静かに刀を鞘に戻した。
「やったな。」
いつの間に、隣にいた小芭内が陽華に話しかけた。陽華が小芭内の顔を見ると、その目は優しく微笑んでるように見え、驚いた陽華は思わず小芭内に突っ込んだ。
「…ねぇ、今笑ったよね?」
「わ、笑ってないっ!」
小芭内は否定するように陽華を睨んだが、その顔はかなり動揺しているように見え、陽華は笑いたい気持ちを必死に抑えた。