第20章 蛇柱
扉を開けると少し先に階段が見え、陽華は走り出した。
走り出すとまた例の触手のようなものが、陽華の行く手を阻む。素早く切って階段へと近づくが、寸でのところで足を絡め取られた。
触手達はその絶好の機会を逃すまいと、次々と陽華の身体に巻き付いた。キリキリと締め上げられ、陽華は自分の骨が軋む音が聞こえ、「うぅ…。」と呻いた。
その時だった。
「蛇の呼吸 伍の型 蜿蜿長蛇!」
小芭内の声が聞こえ、触手の締め付けが弱くなった。小芭内が触手を切ったのだ。
蛇が舞う幻影が見え、陽華は床に転がった。
小芭内は、陽華を庇うように、触手の前に立ちはだかると、チラッと陽華に視線を落とした。
「大丈夫か?」
「…ありがとう、助かったわ。」
「お前が無事で良かった。俺を庇って死んだとなれば、冨岡に会わす顔がない。」
そう言って、残りの触手を跡形もなく切り付けた。小芭内はもう出てこないと確信すると、陽華に近づき、「立てるか?」と、手を差しのべた。
陽華は小芭内の手を取り、起き上がった。
「なんだ、意外と優しいね。」
陽華が微笑みながら言うと、小芭内はするどい眼光で陽華を睨み付けた。
「ぶざけるな。死にたいのか?」
そう言いながらも、小芭内の頬は少し赤みを帯びていた。
「どうする?また上に上ってみるか?」
小芭内の言葉に、陽華は静かに首を降った。
「…さっきは気が付かなかったんだけど、うにょうにょしたのがいなくなったら、この廊下の先に強い匂いを感じるようになったの。」
そう言って、陽華は廊下の先を指差した。