第20章 蛇柱
陽華は落ちていく穴の中で、この状況を打開させようと、頭フル回転させた。
(やばい、この穴深い…、どうにかしないと…、)
先程いた場所は、恐らく最上階。とすれば、十階相当は落ちることになる。足から落ちた為、なんとか態勢は保つことが出来ていた。陽華は手に持った刀を構えると、
「相棒、折れたらごめんねっ!」
と、相棒の刀に一言詫びを入れると、思いっきり刀を壁に突き刺した。
壁は柔らかい素材で刀は難なく突き刺さった。それをブレーキの代わりにして、スピードを緩めようと試みるが、柔らかすぎてブレーキがかからない。
間に合わない!と思った瞬間、陽華は穴の底に激突した。
死んだと思った途端、陽華の身体はぼよんと弾き飛ばされた。
そのまま何回か跳ね上がり、着地した。底は壁と同じく柔らかい素材で出来ていて、落ちた衝撃を吸収してくれたのだった。
「…はぁ、絶対に死んだと思った。」
陽華は安堵の表情を浮かべた。立ち上がろうと手を地面に付けると、ぬちゃ…とした感触が伝わってきて、思わず掌を見た。
ねばつく液体がべっとり付いてきて、陽華の頭に不吉な予感が過った。
「うわっ、最悪…。まさか、ここが鬼の腹の中とかじゃないよね。」
そういえば、なんだか血生臭い。
陽華はなんとか立ち上がって、出口になるようなところはないか、手当たり次第に刀で壁を切りつけてみた。
すると、一ヶ所だけ向こう側が除ける場所が見つかった。壁の向こう側には扉が見えた。
柔らかい壁の外に出て、辺りを見渡すと、そこは窓ひとつになく、閉塞的な空間が広がっていた。
「…地下室かな。」
陽華はそう呟くと、その部屋の扉に手を掛けた。