第20章 蛇柱
しかし、近くに着地した小芭内は厳しい顔で陽華を見た。
「いや、まだだ!ちっとも手応えを感じない。こいつは本体じゃない。」
小芭内がそう言った瞬間、建物全体から地響きのような音が鳴り出した。
そして壁から床から天井から、巨大な触手のようにうごめく物体が、無数に姿を表した。そのひとつひとつに口をついており、陽華と小芭内を喰わんと、一斉に襲いかかってきた。
「蛇の呼吸 弐ノ型 狭頭の毒牙!」
「氷の呼吸 録ノ型 白銀の寒花!」
二人はほぼ同時に技を繰り出し、その触手達を切り刻んだ。
しかし、広いフロア全体にそれは蔓延しており、陽華と小芭内は乱れ打つように、技を繰り出して応戦した。
フロア内に出現した触手の、ほぼ全てを切り刻むと、さすがに鬼も痛手と感じたのか、退散するようにフロアから姿を消した。
小芭内はげんなりした顔で、陽華の傍までくると、「こいつら、なんなんだ。」と悪態を付いた。
「もしかすると…、」
陽華は頭の中で、今までの事象を整理し、思い当たる事例を小芭内に話した。