第17章 炎柱
夜が明け、うっすらと日の光が差し込む山の麓で、杏寿郎と陽華は隠の到着を待っていた。自分の膝の上で眠る義勇を、心配そうに見つめている陽華を見て、杏寿郎は言った。
「君を、嫁に貰うのは諦めよう。」
その言葉に、陽華は杏寿郎を見た。
「君にはもう、君を守ってくれる剣士がいるようだからな。」
杏寿郎の瞳は義勇を捕らえていた。陽華は少し顔を赤らめて俯いた。
「君はもう少し冷静な判断が出来ると、戦い方を見ていて思ったが、この男のことになると、冷静さを失うようだしな。」
そう言って、ワハハと大きく笑った。しかし、突然真面目な顔で、考えるように顎に手をやると、
「だがそうなると、うちの敷居を跨ぐのは難しいな。……君が本当にうちの炎柱の書を見たいと言うのなら、後はもう、アレしか方法がない。」
「方法が他にあるの?」
陽華はゴクリと喉を鳴らし、杏寿郎の言葉を待った。杏寿郎は突然、カッと目を見開いて、こう言った。
「柱になる!柱になれば、父上もきっと君を受け入れてくれると思う!」
「は…はしら?」
あまりの高い目標に、陽華は絶句した。
「もちろん、俺もなるつもりだ!だから陽華、どちらが先になるか、勝負だな。」
そう言って、杏寿郎は高らかに笑った。その声に反応したのか、寝ている義勇が「うぅ…ぅ…、」と、うめき声を上げた。杏寿郎は義勇を見ると、
「今、この中では冨岡が、一番柱に近そうだな。」
と、さらに笑った。