第17章 炎柱
鬼は杏寿郎達の攻撃を悠々と交わし、距離を置いた大きな岩の上に着地すると、舌舐めずりをしながら、陽華をじーっと見た。
「決めた。今日の主菜はお前だ。」
と呟き、杏寿郎達三人をを見渡した。
「……三人か。お前ら鬼狩りどもの、鍛え上げられた筋肉は栄養価が高い。三人も喰えば、きっとあのお方に認めて貰える。俺は十二鬼月になれるっ!」
そう言って高らかに笑う鬼から、陽華は距離をとり、その動きをじっくりと観察した。鬼が攻撃に転じる時、避けて後退する時、それになんらかの癖、規則性がないかと。
それを核心した時、陽華は突然、杏寿郎に向かって叫んだ。
「杏寿郎!右に三歩、斬り付けて!」
杏寿郎は訳がわからなかったが、指示に従い、斬り付けた。
「うあぁぁぁぁ!!」
何もなかった空間に、鬼が現れ、断末魔の悲鳴を上げた。肘から下の鬼の手が切られ、血渋きが上がった。
「よしっ!」
陽華は思わず、声を上げた。義勇と杏寿郎は陽華の近くに着地すると状況を聞いてきた。
「やっぱりただの高速移動だった。移動出来る距離は十メートル程度!空間移動系だったらやっかいだけど、ただの高速移動ならそんなに脅威じゃない。」
陽華は二人に向かい、こう言った。
「しかもあいつ、十二鬼月にして貰えるとか、ほざいてるけど、さっきから高速移動で放った一撃を止められると、後ろに逃げるだけで戦わない。それはすなわち、大した戦闘力もない、ただ速いだけの雑魚鬼と見た!」
陽華はそう言って、にんまりと微笑んだ。
「二人は私の言うとおりに動いて?切り刻んで、ボッコボコにしてやるわ…。」
最後の方は、目が据わっていた。杏寿郎は驚いて、
「陽華はこんな子だったのか?」
引きぎみに義勇に訪ねると、
「いや、…多分、顔を舐められたこと、相当根に持っているんだろう。と思う。」
と、義勇は答えた。