第17章 炎柱
「お前、旨そうだな。」
(やっぱり、瞬間移動…した?)
鬼は陽華の肩を掴み、顔を近づけると、味見をするようにペロッと頬を舐めた。陽華は驚きに表情を歪めた。
「水の呼吸 弐ノ型 水車!」
陽華の身体に張り付いたままの鬼に、義勇が横から一撃入れると、鬼はまた消え、十メートルほど、離れたところに立っていた。
「大丈夫か、陽華?」
義勇の言葉に、陽華はしかめっ面を浮かべ、舐められた頬を隊服の袖で擦りながら「マジでキモい!」と叫んだ。
そんな二人に杏寿郎も近づくと、
「よもやよもや…だ。どうなっている?」
と首を傾げた。
「うーん、高速移動?…瞬間移動?…空間を歪めている。それとも、時間を止めている…とか?まだ情報が足りないなぁ。」
陽華は敵の血鬼術の正体を見極めようと、整理するようにブツブツと呟いた。その姿を見た義勇は陽華に言った。
「俺と煉獄が時間を稼ぐ。お前はその間、作戦を考えてくれ。行くぞ、煉獄!」
「承知した!」
飛び出す二人の動き、鬼の動きを見て、陽華は情報を整理した。鬼は間違いなく上位ではあるが、十二鬼月ではない。選ばれないのには、理由があるはずだ。