第17章 炎柱
三人はさらに山深くまで進んだ。段々と強くなっていく鬼の匂いと共に、血の匂いが混じってきて、陽華は思わず鼻を抑え、顔をしかめた。
「多分…、鬼はこの先。後、すごい…血の匂いも…、」
その言葉通り、鬼はいた。たくさんの人間の屍の上に、静かに鎮座し、血肉を喰らっていた。その鬼は杏寿郎達の気配に気付くと、舌打ちした。
「…食事の邪魔はするなって言ってるだろ?」
不機嫌そうに言った鬼は、杏寿郎達を一瞥するとニヤッと微笑んだ。
「…なんだ、鬼狩りか?また餌の方から、ノコノコと来てくれた。」
鬼は屍の上に立ち上がると、喰っていた死体の腕を投げ捨てた。
そして次の瞬間…、
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!」
鬼が動く前に最初に動き出したのは、激情に駆られた杏寿郎だった。
しかし、その一撃は空を切っただけだった。
「消えた!?」
そう思った瞬間、鬼は義勇の目の前にいた。鬼の爪が研ぎ澄まされた刃のように変形し、義勇に襲いかかる。義勇は鬼の攻撃を、自身の刀でギリギリ受け止めた。
「くっ!!」
義勇が受け止めた刀を振切ると、鬼は後ろに後退した。陽華が義勇の横に走り寄る。
「あいつ、動きが…、」
「あぁ、おかしいな。やつの血鬼術の正体が解らないうちは、距離を取って闘おう。」
義勇はそう言うと剣を構え、間合いを取った。鬼はそんな二人に向かって気味悪く微笑むと、再びフラッと姿を消した。
陽華達が身構えたその刹那、
「なっ!」
十メートルは離れていたはずの鬼は、陽華の目の前にいた。