第17章 炎柱
今回の任務は、この山に巣食う鬼の退治。
山には、複数の鬼がいると言う情報だった。基本、鬼は群れることはないが、利害が一致すれば例外もある。その場合、知能の高い上位の鬼が、裏にいる可能性が高かった。
杏寿郎達が山に入ると、何匹かの鬼が襲ってきた。三人は連携して、鬼を切っていった。
同行したその二人の動きを見て、杏寿郎は素直に「強い」と思った。
特にこの冨岡と言う少年、磨き上げられた剣技、一分の隙もない動き、加えて放つ技の美しさ、これほどまでに流麗という言葉が似合う剣士は、他にいないだろうと、杏寿郎は思った。相当の努力してきたことが、一目でわかる。
対して陽華と言う少女は、力、技こそ冨岡に劣るが、的確な判断でサポート役に徹している。二人の動きで、二人の育手の技量が垣間見えるほどだった。
山の中腹まで来ると、鬼の猛攻は落ち着き、三人は僅かな休息を取った。竹筒に入った水で喉を潤す杏寿郎の傍に、陽華が近づいてきた。
「ねぇ、杏寿郎って呼んでもいい?」
陽華が聞くと、杏寿郎は「あぁ。」と頷いた。
「ねぇ、煉獄家の人って、みんなその髪の色なの?」
「あぁ、父上も祖父もそのまた祖父も、みんなこの髪色だ。」
「燃え盛る炎みたいで、すごく綺麗!まさに炎柱って感じだよね。」
そう言ってニッコリと笑う陽華に、杏寿郎の胸が少しざわついた。
(うむ、この娘なら…、)
そう思い、杏寿郎はある提案を陽華にした。