第2章 異変
定食屋を後にして、二人は本部に帰るための道を歩いていた。日はもう傾き掛けていた。
少し開けた場所に出ると、綺麗な夕日が見え、陽華は足を止めた。
「ちょっと、一休みしていかない?」
陽華は振り返って、後から来る義勇に喋り掛けた。近くにある、大きな岩に腰かけると隣に座るよう、ポンポンと岩を叩いた。義勇は促されるまま静かに座った。
そのまま二人はしばらくの間、夕日を見ていたが、何かを思い出した義勇が、突然口を開いた。
「柱合会議の後……、」
「ん?」
「柱合会議の後、お館様と話してた…。」
「あぁ。明日、担当区域に帰る前に、書庫の閲覧の許可を頂いてたの。」
産屋敷家の書庫には、膨大な量の鬼殺隊と鬼の、長い戦いの歴史が残っている。柱になれば閲覧が許される。陽華が柱になった目的の一つだった。
「…本当に歴史が好きだな。」
義勇がそう言うと、陽華は首を左右に降った。
「私が好きなのは、鬼殺隊の歴史!!」
そう言って目を輝かせた。
小さい頃からそうだった。寝る前に鱗滝が聞かせてくれる、鬼殺隊のお話し。
義勇と錆兎は修行の疲れから、途中で力尽きて眠ってしまう中、陽華だけは目を輝かせながら、最後まで聞き、鱗滝に「もう寝ろ。」と言われるまで、お話をせがんでいた。
「もう千年にもなるんだよ。千年もの間、何千何百人もの英雄達が、命を掛けて人々を守る為に、鬼を狩ってきた。」
この話をする時の陽華の目は、いつも輝いていた。義勇はその顔を見るのが好きだった。
「…でもこの世に生きる、ほとんどの人が知らないの。鬼の存在も、私達の存在も。…でもそれって、鬼狩りがちゃんと、鬼を狩ってきたって証拠だよね。」
そう言って、陽華は義勇に向き直ると、ニコっと微笑んだ。