第2章 異変
注文し、暫くすると二人分の鮭大根定食が運ばれてきた。
義勇は鮭大根を一切れ、箸で摘むと、嬉しそうに口に運ぶ。
「おいしい?」
陽華が訪ねると、義勇は鮭大根を頬張りながら、コクコクと首を上下に降った。その目は、普段から創造出来ない程輝いており、陽華は顔を綻ばせた。
「ほら、また口の周りにいっぱい付けてる。」
義勇の頬に付いたご飯粒を取ってあげようと、陽華が手を伸ばすと、義勇は口をモグモグしながら、頬を差し出した。
子供時代から、いつもご飯粒を取ってもらっているからこそ出た、無意識な姿だが、その姿が可愛すぎて、陽華は悶そうになるのを、必死に耐えた。
その光景に、若干の懐かしさを感じる。
「フフ。鱗滝さんが鍋いっぱいに作ってくれた鮭大根、思い出しちゃった。義勇ってば、目を輝かせながら食べてたよね。」
そう言いながら、陽華は自分も運ばれてきた鮭大根を一口食べ、「おいしい。」と呟いた。
そんな陽華の話を聞きながら、義勇は思い出していた。
確かに昔から鮭大根が好きだった。姉がよく作ってくれたから。
でも本当の意味で好物になったのは、姉が死んで絶望し、復讐を誓って踏み入れた鬼狩りへの道。その辛い修行の中で、自分に出来た新しい家族。
あの四人で食べた鮭大根が本当に美味しかったからだ。
あの四人で…は、もう叶わないけど、今現在も目の前で、一緒に鮭大根を食べてくれる大切な人を失わないよう、守って行きたいと義勇は思った。
一方、陽華は本当は天丼が食べたかった。でも、こんな子供の頃のような無邪気な義勇を見れる、唯一の方法ならば、一生鮭大根を食べ続けようと思った。