第16章 ※初恋
「驚いた…。泣くんだね?」
「え?」
「いつも無表情で、話してるの見たことがないから、感情がないのかと思った。」
義勇の言葉に陽華は驚いた表情を浮かべた。
「何か、理由があるの?」
そう義勇が問いかけると、陽華は小さな声でこう言った。
「…怒られるから。」
陽華は悲しい表情を浮かべ、眈々と自分に起こった出来事を喋りだした。
「預けられた親戚のうちで、鬼の話しをしたら、頭がおかしいって言われて、恥ずかしいからもうお前は喋るなって、言われたの。」
「そうだったんだ。(俺と同じだ…。)」
自分と同じ境遇に逢い、義勇には痛いほど陽華の気持ちがわかった。義勇は握られた手をギュッと握り返し、陽華に向かって言った。
「ここには、鬼の話をしたって君を怒る人はいない。だから、おもいっきり喋ってくれていいよ。それに俺は、話すのが苦手だから、陽華が喋ってくれると助かる。」
義勇は優しい笑顔を陽華に向けた。その眩しい笑顔に、陽華は顔を少しだけ赤らめ、「…うん、わかった。」と、俯きながら答えた。
その時だった。空が光り、遠くから雷の音が聞こえた。