第16章 ※初恋
薪を拾い集め、義勇と陽華は帰り道の山道を歩いていた。何もしゃべらない陽華と、しゃべるのが苦手な義勇。
義勇は少し気まずさを感じていた。やはり先輩として自分が先に声を…、
「なぁ、陽華…、」
義勇が勇気を出して声掛けた、その時だった。
ガサガサっ!
突然木々を揺らし、野生の動物が義勇達の前を横切った。驚いた陽華は小さく声を上げ、後退りした。しかし、その後ろは崖だった。陽華は足を滑らせ、崖に落ちそうになった。
「陽華!!」
義勇が寸でのところで腕を掴んだが、陽華と薪は、小さな義勇に持ち上げられるわけがなく、二人は揃って崖の下に落ちていった。
・・・・
気を失った義勇は、誰かが泣いてる声で目を覚ました。
目を開けると、目の前には泣きながら心配そうな顔で、義勇の手を握っている陽華がいた。義勇は慌てて起き上がった。
「いでてて…っ!」
身体中に広がる痛みに、義勇は顔をしかめる。最後まで起き上がれず、再び横になった。
「まだだめだよ!あんな高いところから落ちたんだから…。」
陽華が指差す崖を見て、義勇は青ざめた。結構な高さから落ちたことになる。助かったのは、この下に敷き詰められた落ち葉のお陰だろう。
「陽華は…大丈夫?」
義勇が問いかけると、陽華はコクンと頷いた。
「私は大丈夫。あなたが…守ってくれたから…。」
「…え?」
陽華に言われて驚いた。記憶にないが、どうやら陽華を庇い、自ら下になって落ちていったようだった。
「ありがとう…。」
そう言って、大粒の涙を流す陽華に、義勇はドキドキした。
目の前で女の子に泣かれたことがない上、泣いてる相手は、さっきまで感情を見せたことのない女の子だった。