第16章 ※初恋
幼い義勇は、薪となる枝を拾いに挟霧山の中腹にいた。
その横には1ヶ月ほど前に、鱗滝の元に修行にやってきた女の子、陽華の姿があった。
自分と同じで、身内を鬼に殺された女の子。鬼への復讐の為、鬼殺隊への道を選び、ここへ来た。
義勇は密かに陽華をすごい子だな。と思っていた。女の子なのに自分達と同じ訓練をこなし、けして弱音を吐かなかった。
義勇もここに来てもう4ヶ月ほどになるが、自分の時はどーだっただろうか?泣いて、錆兎に怒られていた気がする。
「じゃあ、俺はこっちを探すから、陽華はあっちを。崖が多いから、先の見えないところには近づかないように気を付けて。」
義勇の言葉に陽華は小さく頷いて、自分の担当範囲に向かって歩きだした。義勇はその後ろ姿を見つめた。
(…本当に、静かな娘だな。)
陽華が来て1ヶ月。
義勇は一度も笑ってるところを見たことがなかった。それどころか、自分から言葉を発したことがないかもしれない。
綺麗な白い肌に大きな瞳。紅を引いたかのような少し赤みかがった唇の、整った顔だち。きっと、笑ったら可愛いのにな。と思っていた。
義勇はチラチラと陽華の様子を見ながら、作業をした。錆兎から陽華はまだ山に慣れていないのだから、絶対に目を離すなと言われていたから。