第16章 ※初恋
何事なかったかのように、平静を装う義勇の隣に、陽華はちょこんと座り、そっと義勇の身体を触った。
「何してる?」
「義勇の身体だって、冷たいじゃない。私のせいで風邪引いたら申し訳ないよ。」
陽華は義勇の前に立つと羽織っていた羽織を脱ぎ、義勇に掛けた。そして自分は義勇の足の間に入り込み、膝を抱えて座ると義勇の胸に背中を預けるように寄り添った。
「陽華、おまえはまたそうやって…、」
「黙って。こういう時は、肌を直接触れあった方が暖かいから…。」
そう言われると、もう黙るしかなかった。義勇は羽織に袖を通すと陽華を包むように前を閉じた。
触れた肌がじんわりと暖かくなってくる。さっきまでは身体が本当に冷えていたから、陽華の裸が目の前をチラついても、まだ反応はしていない。
しかし、これで体温が上がったら、どうなるかわからない。
なんとか平常心を保とうと義勇が奮闘していると、陽華が静かに喋りだした。
「義勇、覚えてる?小さい頃、こうやって寄り添いながら、洞窟で過ごしたことあったよね。」
陽華の問いかけに、義勇は自分の記憶を思い起こしてみた。
「あぁ、あの時か。」
それは義勇達が出会って、1ヶ月くらい経った頃のことだった。