第2章 異変
二人は本部を出て、近くの町まで来ていた。おいしい定食屋さんがあると聞いたからだ。
町に入り、教えられた通りを少し進むと、目的の定食屋さんはあった。
こじんまりとした、下町の定食屋。
「いらっしゃいませ!」
中に入ると、元気な女将さんの挨拶が聞こえた。陽華達は促されるまま、端の席に向かい合わせで、腰を落ち着けた。
席に備え付けられたお品書きに目を通しながら、陽華は義勇に喋りかけた。
「ここの定食屋さんね。蜜璃に教えて貰ったの。」
「蜜璃?」
初めて聞く名前に、義勇が首を傾げた。
「最近、鬼殺隊に入った娘、甘露寺蜜璃。杏寿郎のとこで面倒みててね。すごいのよ、筋肉の質が常人とかけ離れててね。どんどん階級上げてる。あれは柱になるね。」
「…生まれもっての天才か。」
不甲斐ない自分とは、比べ物にならない。そう思ったのか、義勇は物思いに耽るように、遠くを見つめた。
そんな義勇を尻目に、お品書きを見ていた陽華が突然、「あっ!!」と大声を上げた。
「義勇!鮭大根あるよ。食べる?」
一瞬で義勇の顔がパッと明るくなった。
鮭大根は義勇の大好物だった。陽華はその情報を仕入れていたからこそ、義勇をここに誘ったのだった。
案の定、嬉しそうに顔を輝かせた義勇を見て、陽華の心も弾んだ。