第14章 柱合裁判
柱合会議からの帰り道、陽華は先を歩く義勇を捕まえた。
「義勇!こう言うことになってるなら、先に知らせてよ、焦ちゃったじゃない!」
陽華が抗議すると、義勇は表情一つ変えずに言った。
「仕方がない。ほぼ拘束されていた。」
義勇の言葉に、陽華は納得がいかない表情を浮かべた。
「じゃせめて、義勇が説明しといてくれれば、よかったのに…。」
「説明しようとした。しかし、胡蝶に嫌がらせかと、言われてしまった。」
そう言った義勇の横顔からは哀愁が漂っていて、陽華は察した。
きっとこの人は口下手過ぎて、説明する気がないと思われてしまったのに違いないと。
「……そっか、ごめんね。」
申し訳無さげに、陽華が謝罪する。
すると突然、義勇が真面目な顔で、陽華を見つめた。
「…ど、どうしたの?」
その吸い込まれそうほどに深い、紺碧の眼差しに、鼓動が早まっていくのを感じる。
義勇は熱を帯びた視線を、陽華に送ると、静かに言葉を発した。
「陽華…、俺は…、」
義勇が、ゆっくりと詰め寄る。陽華は息を飲み込むと、次の言葉を待った。
「陽華…、俺は…、俺は…嫌われているのか?」
「ん?」
全然思ってもいなかった言葉が出てきて、思わず陽華は聞き返した。
「胡蝶に言われた。…俺はみんなに嫌われていると…。」
「あぁ。みんなって訳じゃないけど…(しのぶのやつ、そんなにはっきり言わなくてもいいじゃない!)若干数、仲が良いとは言えないのがいるよね?」
陽華の言葉に、義勇は不思議そうな表情で俯いたが、すぐに陽華の方に視線を戻した。
「そうか?」
(無自覚!そこよ、そこなのよ!)
陽華は義勇を傷つけないように、出来るだけ柔らかい表現で説明した。
「義勇は喋るのが苦手でしょ?だから、義勇のことを良く解ってない人達がいるの。少し誤解をしてるだけ。これからゆっくりと伝えて行けば、いいんじゃないかな?」
義勇は、陽華の説明に納得したような顔で頷くと、
「そうか、善処しよう。」
と言った。