第14章 柱合裁判
満足そうな顔をしている義勇に、陽華が胸を撫で下ろしていると、後ろから声を掛けられた。
陽華が振り向くと、胡蝶しのぶが立っていた。顔が少し怒ってるように見えた。陽華は恐る恐るしのぶに問いかけた。
「しのぶ…ちゃん、怒ってる?」
「当たり前です。あんな大事な事を私に黙っていたなんて!」
しのぶはいつもの微笑みを絶やさなかったが、額には青筋が浮かんでいた。
「今回だって、話してくださっていれば、いくらでも対処出来たのに!」
そう言うしのぶに、陽華はおもいっきり頭を下げた。
「ごめん!でもね、隊律違反なのはわかっていたし、しのぶを巻き込むわけにはいかなかったの。責任を取るなら私たち一門だけだって、決めてたから。」
陽華の誠意のある謝罪に、しのぶはふーっと息を吐いた。
「そういうことなら、しょうがないですけど…。」
渋々と言った表情を浮かべるしのぶに、陽華の隣から、義勇が口を出した。
「胡蝶、あまり陽華を責めないでやってほしい。判断したのは俺だ。」
突然しゃしゃり出てきた義勇に、しのぶは視線を向けると、冷たく言った。
「だったら、冨岡さんがちゃんと説明してくだされば良かったんですよ。おかげで陽華と竈門君が、無駄にみんなに責められたじゃないですか。」
「なっ、俺は説明しようと…、」
義勇はショック受けたような顔で、固まった。そんな義勇にしのぶは畳み掛けるように、言葉を続けた。
「そうやって言葉足らずで曖昧な態度を取るから、話が混乱していくんです。…だから、嫌われるんですよ。」
「しのぶっ!!」
慌てて陽華はしのぶを止めた。
しのぶは言ってやったとばかりに満足そうな顔をしていたが、義勇は反対に身体をわなわなと震わせると、しのぶを向かって叫んだ。
「お、俺は嫌われてない!」
静かな鬼刹隊本部に、義勇の声が響き渡った。
ー柱合裁判 完