第13章 ※潜入任務
陽華がいなくなり、二人になるとお舘様は義勇に話しかけた。
「最近、何かあったのかい?」
「いえ、特に変わりはありません。」
義勇が静かに答えると、お舘様は意外そうにこう言った。
「そうかな?私には、君の纏う気が、少し柔らかくなったように感じるよ。」
お舘様の言葉に、義勇はハッとした。確かに最近、自分でも驚くほど、心が穏やかだった。
「いい傾向だね。陽華のおかげかな。…それに…雰囲気が…、そうか…男になったのかな?」
お舘様はニコッと義勇に微笑み掛けた。まさかお舘様から、そんな話題が出てくると思わず、義勇は顔が爆発するんじゃないかと思うくらい、赤くなった。
「お、お舘様っ!!」
「はは、別にうちは恋愛禁止じゃない。のぼせ上がって、疎かになるなら困るけど、意欲に繋がるのであれば、私は応援するよ。所帯を持ったっていい、天元がいい例だ。」
「おれ…、私はまだ、鬼を倒すことしか、考えられません。」
義勇は落ち着きを戻すと、静かにそういった。お舘様はまっすぐ義勇に視線を向けた。
「それは鬼殺隊にとっては、とても助かるけどね。でもね、義勇。小さい幸せを持つ権利は誰にでもあると思うよ。頑固になりすぎて、君の事を思ってくれる人を、疎かにしてはいけないよ。」
お舘様はそう言った後、「…でも、」と続けると、義勇に優しく微笑みながら、こう言った。
「杞憂だね。君は不器用で言葉足らずだから、誤解を受けやすいけど、私は知ってるよ。本当は誰よりも、あの娘のことを大切に想っていることを。そうだろう、義勇?」
義勇は目頭が熱くなるのを感じた。やはり、このお方はすごい人だ。いつも欲しい言葉で返してくれる。
義勇は震える小さな声で「ありがとうございます。」と感謝を述べた。
「さぁ、この話しはこれでお仕舞いにしよう。もうすぐ君の今回の合同任務の相手が来る。任務の話に戻ろうか?」
お舘様の言葉に、義勇は姿勢を正した。