第13章 ※潜入任務
鬼が敗れると、当主の男は態度を一変した。
「俺は、あの鬼に脅されていたんだよっ!仕方なくやったんだ!」
陽華は男の首もとに剣先を当て、男を睨み付けた。
「それにしては、さっきまで随分とお楽しみだったみたいだけど…。」
陽華の剣先が男の喉元に刺さり、血が滲み滴ると、男は叫び声を上げた。しかしすぐに我に返り、陽華をキッと睨み付けた。
「無駄だぞ!俺は金を腐るほど持ってるんだ!金さえを払えば、政府は俺に何も出来ないっ!捕まっても、すぐに無罪放免だ!」
そう言うと、男は大声で笑いだした。恐らくこの男の言ってることは本当だろう。残念だが、この世の中の仕組みは腐っている。だが…、
ドカッ!!
突然、男の顔が歪み、陽華の視界から消えた。横を見ると、男が壁に叩きつけられ、伸びていた。義勇が男を殴り付けたのだ。
「すまない、腹が立った。」
「義勇、気持ちはわかるけど、死んじゃったらどうするの?」
陽華は男に近づき、刀でつついてみた。微かに反応がある。陽華は伸びてる男の傍らにしゃがみこむと、男に向かって言った。
「ここで今すぐに、その口を永遠に封じてもいいんだけど、私達のボスからは、生け捕りにしろって言われてるの。うちのボスもね、政府に結構顔が効くんだ。どっちが上かしらね。」
鬼殺隊は政府非公認と言えど、政府が鬼殺隊の存在を、その前に鬼の存在を知らないわけがない。お互いに暗い事情を補ってきた関係だった。
加えて鬼殺隊の長、産屋敷家は代々、一族に受け継がれる力で政界をも掌握してきた。勝負は目に見えてる。
産屋敷家の権力をもってすれば、この男は財産を没収されて、口封じの為、一生を日の当たらない場所で過ごす事だろう。
陽華は伸びてる男を縄で縛り上げると、服の胸ポケットから、牢屋の鍵を取り出した。そしてその鍵で、捕まっている使用人の女の子達を牢屋から助け出した。
「もう、安心して。悪いヤツはやっつけたから。あなた達はうちのボスが安全な就職先を斡旋してくれるから、心配しないでいいよ。」
陽華がそう言うと、女の子達は助かった喜びか、一斉に大声で泣き出した。