第1章 駆け引き
それに、調べた所によると、夜神月には、数名のガールフレンドがいる事も分かっている…。しかもそのガールフレンドは、皆美雪とは、全く違うタイプである事も、酷く気に掛かる…。
そう…。今夜神月が付き合っているガールフレンドは…容姿端麗であり…。夜神月の事が大好きで…。夜神月に心酔していると言っても差し障りがないほどだ。
そして夜神月の言う事なら…疑いさえ持たず…。夜神月の言う事を信じ…。夜神月の言う通りに行動するタイプだった…。それに対し美雪は。
確かに可愛らしい外見ではあるが、夜神月が付き合っているガールフレンドの様に、夜神月が好きで、夜神月に心酔している訳でも、夜神月の言う事を疑う事なく信じ、夜神月の言う通りに行動をするタイプでは、けして無い。
なので例え夜神月が誘ったり、仕事を手伝うと言っても。自分で判断し、必ずしも夜神月の思う通りには行動しない。それが彼女、美雪だった。
私は、そんな美雪だから、もしもの事があるとは思えないが。だからといって、夜神月がこうも美雪にちょっかいを掛けるのは、面白くない。そんな事を、私が考えている間も、夜神月が美雪に話し掛けている。
月『それに、せっかく無料券をもらったのに、使わないのは勿体(もったい)無いからさ。』
そういって爽やかな笑顔で美雪に言った。私には、その夜神月の笑顔が、胡散臭く見えて仕方がない。
美雪『確かに気にはなるんだけど。せっかくもらったなら、月君が気になる人とか、好きな人を誘った方が良いと思うよ? せっかくのチャンスだし。』
とそう美雪が、夜神月に言った。私は美雪のその言葉を聞いて、一瞬嬉しくなり、自分でも顔が笑ったのが分かった。
そして美雪にそう言われた夜神月は、一瞬だけ、その爽やかな笑顔を引き釣らせた。美雪は気付いていなかった様だが、私には分かる。