第2章 物語の外側
「殿下。おはようございます」
「………んぅ」
「朝ですよ。朝食の準備が整っています。早くお召換えを」
「………起きたくない」
「そう言わずに」
ほら、と促せば渋々と言ったように軽く目を開ける。
緑碧玉の瞳がサラの姿を捉えると眉間に皺がよった。
「………なんでお前がいるんだ」
「側近ですから」
「サカキはどうした」
「お仕事されてますよ」
ほら早く、と再度促せばようやく身体を起こす。
起こしたものの、まだ本調子でないのか寝台に腰かけたままぼーっとし動こうとしない。
見れば眼は半分閉じかけており、頭はゆらゆらと船を漕いでいた。
「ラジ殿下。早くしないと朝食が冷めてしまいますよ」
「……分かってる」
「お着替え手伝いましょうか?」
「いらんわ!」
あまりの寝ぼけ具合に親切心からそう尋ねれば電光石火の速さで却下された。
そこでようやくはっきりと目が覚めたのかぎょっとサラを見上げる。
「なんでお前がここにいる?!」
「側近ですから。…これ二度目ですね」
「寝室への立ち入りを許可した覚えはないぞ!」
「サカキ様から頂きました」
「あいつめ………っ」
ぎりりっと歯を食いしばる様子はとてもじゃないが天使には見えない。
もうずっと寝てればいいのにと思っていると、はたと目が合った。
「……いつまでいるんだ。さっさと出ていけ」
「着替え大丈夫ですか?」
「平気だと言っているだろうが!」
追い立てられるように退室する。
なんだかからかいたくなってしまうのは前世の記憶故だろうか。