第2章 物語の外側
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「おはようございます」
「おはようございます。早いですね」
「初日ですからね。気合いを入れていかないと。
……ところでサカキ様。私ももう客人では無いのですから敬語は結構ですよ」
部屋には既にサカキがいた。
仕事であろう書類に目を通していた彼はサラの提案をやんわりと拒否する。
「サラ殿の言葉を借りればまだお試し期間のようなので、半分は客人のようなものです」
「そうは言っても、指導を受ける身としては些か座りが悪いと言いますか…」
「ひと月後に考えますね」
どうやら今すぐ訂正はしてくれないらしい。敬語の件は諦めて、サラはこの部屋の主がまだ現れていないことに気付き話を変えた。
「殿下はまだお休みですか?」
「えぇ」
「起こしてきてもいいでしょうか」
「よろしくお願いします」
寝室へ行く許可を貰うと、メイドから服を預かり奥の扉をノックする。
「殿下。朝の身支度に伺いました」
ノックをし待つが反応が無い。
「言い忘れましたが殿下は朝がすこぶる苦手です」
「……そのようですね」
しょうがない、直接起こすか。
確認のためもう一度ノックをし、入りますよと一声掛けノブを回す。
寝台を確認すればラジは穏やかな寝息を立て眠っていた。
(寝ていれば可愛い顔をしているのに)
性格はやや難アリかもしれないが、ラジは見た目はとても整っている。
少年期特有の儚さもあり、こうして寝ているところを見ればまるで天使である。
(寝かせておいてあげたいけどそうもいかないよね)
執務こそまだ無いものの、彼の予定は今日も盛り沢山だ。
寝顔観察を切りあげ、サラは軽くその肩を揺すった。