第6章 想いの先に
「これがお前の想いだと?」
「これ以上ない答えかと」
「お前意味を分かってるのか」
「もちろん」
戸惑うラジとは対照的に、自信に満ちた真っ直ぐな目で見返す。
「私は貴方がどう国を導いていくのか見たい」
この先、この頼りない王太子が。
誰と出会い、何に触れ、どう歩んでいくのか。
__王となった時、この国は一体どう変わっているのか。
「出来れば、その時まで変わらぬ距離にいたい」
真っ直ぐ差し出す短剣は、ほんの少しラジが手を伸ばせば届く距離。
どちらかが寄りかかるのではなく、常に触れ合っている訳でもない。
互いが求めて、初めて触れ合える距離。
「これが私の”想い”だよ、ラジ」
「__分かった」
沈黙は数秒。
ゆっくりラジの手が動いた。
短剣がサラからラジの手に渡る。
「預かろう」
また風が吹く。
生命に満ち溢れた風は森の木々を、花々を揺らし命を運ぶ。
これが後に王となる少年と側近である少女の友情物語であったなら、めでたしめでたしのハッピーエンドで幕を引いただろう。
けれどもこれは物語ではない。
この先も二人の運命は続き、次へと繋がっていく。
繋がる先に待つのは果たして____