第2章 物語の外側
ラジ王子の一日は多忙だ。
本日は午前中に座学、昼食を挟み剣術の稽古の後に王太子として執務見学を行う予定だ。
朝食の席でサカキから予定を聞かされ既にうんざりしていたラジだったが早くも稽古中に音を上げ始めた。サカキ曰く今日はもった方らしい。
「もう無理だ!これ以上やっても効率が悪い、休憩だ休憩!」
「先程もそう言って休憩されてから五分も経っていませんが」
「休憩が短すぎるんだ。お茶する間もないだろう!」
「稽古の途中でお茶などされては腹が痛んで後が大変ですよ」
癇癪を起こすラジとサカキのやり取りを少し離れて眺めながらサラは汗を拭った。
制服の上着は脇の椅子に掛けられ、身軽となった彼女の腕には訓練用の刃を潰した剣が握られている。
「ラジ殿下はもう少し体幹を鍛えた方がよろしいでしょうな。サラ殿は基礎は十分でしょう。足さばきも申し分ない。あとは剣にもっと重みをつけられたら更にいいかと」
「ありがとうございます」
指導にあたる騎士の言葉にサラは礼をする。
ダメ出しされたラジは悔しそうにサラを睨んだ。
「なんでお前まで一緒なんだ」
「ラジ殿下が側近は文武ともに秀でていることが条件だと仰っていたので。実際に見せるのが一番分かりやすいかと」
陛下からは共に切磋琢磨するよう言われていることだし、ちょうどいいとサラはラジと共に課題をこなしていた。
まだ初日だが優秀だと証明するには十分な成果をあげることが出来ただろうと本日の課題を省みて思う。