第1章 最初の出逢い
「ここより先が王族の居住区域になります。サラ殿にはラジ殿下の部屋近くに一室設えてありますので後ほど確認を」
「はい」
ある扉の前でサカキが止まる。その豪奢な装飾から説明を受けるまでもなくここが目的地なのだと知る。
サカキがノックをしようと腕を軽くあげ、何かに気付いたのかピタリと動きを止めた。
そして軽くため息を吐いたかと思えばノックをせずにドアノブに手を掛ける。
「え、サカキ様。一体どうし…」
「だから不要だと言ってるだろう!」
ノックもせず開けようとするサカキに驚いて声を上げるも、隙間から漏れ出てきた少年の声にサラは驚き目を丸くした。
部屋の中では件の声の主、ラジが王子付きの侍従に向かい何やら文句を言っているところだった。
「ですが殿下。これは陛下の決定でございます」
「当の本人に何の確認もなく決定などおかしいだろう!私には必要ないと父上に伝えておけ!」
興奮しているラジはどうやら入室した二人には気付いていないようで、こちらに背を向ける形でなおも怒鳴っている。
「私にはサカキがいる。これ以上の側近など不要だ!」
あぁ、どうやら私のことで憤っているらしい。
謁見の際、ラジが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた理由をようやく察する。
どうやら彼にとってこの人事は大変にご不満のようだ。
まだまだ不満を続けようとしていたラジはごほん、とサカキが咳払いをしたことでようやく入室者に気付きばっと振り向いた。
「ようやく戻ってきたのかサカキ!お前からも父上に言って……」
そして隣にサラがいることを認め唖然とする。
「………」
「………」
見つめ合う二人。
硬直した空気を壊したのはサカキの二回目の咳払いだった。
「殿下。本日より殿下付きとなったサラ殿ですよ」
「………からな」
「はい?」
「私は、お前が側近だとは認めないからな!」
びしぃ!と勢いよく指を突きつけられる。
横で冷静にサカキが「はしたないですよ」と注意をするのが聞こえるがそこ、今問題か?