第1章 最初の出逢い
(え、ラジ王子ってあのバカ王子だよね。愛妾を複数侍らし髪の色が珍しいからといって無理やり白雪を妾にしようとしただけでなくゼン王子を毒殺しかけた……)
ぐるぐると脳内を回るのは漫画の冒頭シーン。
当時はそんなものかと流していた流れだが、現実と考えるととんでもない王太子だ。
「どうしよう……」
謁見が終わり控えの間に案内されようやくサラは不安そうに呟く。
まさかこんなことになるとは思っていなかった。
好色の彼のこと。下手をすれば自分が妾にされてしまう可能性もある。
「あ、でもまだ殿下も小さかったよね。ということは、まだ間に合う……?」
先程謁見したラジは確か十四だったはずだ。
いくらなんでもまだそういったことは無いだろう。
しかしユーフェリア伯爵の話では既にバカ王子の片鱗は見えている様子。
これからの二年間を思いサラは気が重くなった。
コンコン
一人沈んでいるとドアをノックする音に意識が引き戻される。
「失礼。ラジ殿下側近のサカキといいます。入室の許可を」
「あ、はいどうぞ!」
知った名前に慌てて返事をすれば開いたドアから現れたのは鈍色の髪の青年。
そういえば彼は殿下が五歳の時から仕えていたのだったと思い出す。
失礼がないようにとサラは丁寧に淑女の礼をした。
「お初にお目にかかります。サラ・ユーフェリアと申します。本日よりラジ殿下の側近として仕えることになりました。至らないところもあるかと存じますがどうぞよろしくお願い致します」
「サカキと申します。殿下のお守り……いや、側近は大変かと思いますがこちらこそよろしく」
この人今お守りって言った?
言い直しはしたもののはっきりと聞こえた言葉に思わず見上げれば何か?と言ったように首を傾げられた。
「いえ、なんでも……」
「それでは部屋にご案内します」
こちらへ、と先導するサカキの後をついていく。