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未来に繋がる前日譚【赤髪の白雪姫】

第5章 触れ、生じたのは




 「ちょ、大丈夫か…?!」
 「無理かも…なんか、吐きそ」
 「ま、待て待て!とりあえず横になれ!!」
 「歩けない…無理」

 血を流し貧血のところを立ち上がったせいで血が急激に下がったためか、吐き気と共にサラの目の前がゆっくりと暗くなる。

 「サ、サカキ__!サカキーーーッ!」

 青ざめダウン寸前のサラを抱えたラジの絶叫を子守歌にサラの意識は再びぷつんと途絶えた。




 ***




 それからしばらくサラは医務室で過ごした。
 あの後も傷のせいで熱が出たり毒の後遺症で苦しんだりと数日は様態が安定せず、ようやく日常生活が送れるようになったのは半月後だった。
 まだ本調子でないものの、寝台から解放され気分だけは晴れやかにサラは久しぶりの自室へ戻る。

 (そう言えば、試用期間はどうなったんだろう…)

 あの事件の後寝込んでいたせいで、約束のひと月はもうとうに過ぎてしまっていた。
 延長してもらえるのか、それともあの時点までで判断されるのか。
 今の自分の立ち位置がはっきりせず、とりあえずラジのところへ顔を出してみるかとサラは真新しい制服へ袖を通す。
 弾む心のまま扉を開ければ目の前には思いもよらない人物が立っていた。

 「やぁサラ嬢。ちょっとお時間よろしいかな」
 「へ、陛下……?!」

 国のトップがわざわざ訪ねてくるという自体にサラの心臓は別の意味で飛び跳ねた。
 左右を見渡すがラジやサカキはおろか護衛の兵すらいない。

 「なに、少し話をしたくてな。撒いてきた」

 可哀想に。

 今頃半泣きで探し回っているだろう兵を思いサラはひっそりと同情した。
 だからといって追い返す訳にはいかない。いつまでも立たせておく訳にもいかず、サラは応接間へと案内した。
 同じように驚く部屋付きの侍女に内密にしてもらうよう頼みお茶の用意をお願いする。

 「ありがとう。あとは私がするから」

 茶器を受け取り下がらせる。
 侍女が退室すれば部屋には陛下とサラの二人だけとなった。

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