第5章 触れ、生じたのは
それだけでも具合が悪いというのに、ラジは本当に気付いていないのだろうか?
(言わなきゃダメかな……)
しぶしぶとサラは口を開く。
「いえ……それよりも、その…服、が……」
左肩に毒矢を受けたため、その治療のためサラの上半身は剥き出しになっていた。
もちろん大事な部分は肌着で隠れているとはいえ、普段の制服に比べれば隙だらけなのは変わりがなく。
おまけにこの密着度なため、大事な部分も見えてしまいやしないかとサラは内心ヒヤヒヤしていた。
サラの言葉にようやく今の状況を理解したのか、ラジは一瞬硬直した後素早く立ち上がり距離を取った。
その顔は熟れた林檎のように真っ赤だ。
つられるようにサラの頬もまた赤く染まる。
「す、すまないっ」
「いえ、お気になさらず…」
傍らのケープを手に取り羽織る。左腕が満足に使えないためシャツではなくて助かった。
「あれから、賊は…?」
「あぁ。兵らで捕縛した。今は背後に誰がいるか洗っているところだそうだ」
「そうですか…よかった」
完全決着とはいかないが、実行犯が捕まっただけでも良かったとサラは胸をなで下ろす。
安心したからだろうか、疲労と共に再び睡魔が忍び寄ってくる。
サラの様子に気づいたのか、ラジが医師を呼んでくる、と立ち上がった。
踵を返した足が止まる。
「その……すまなかった」
謝罪の意味がわからず首を傾げる。
「その傷痕、残るだろう」
「あぁ……気になさらないでください」
包帯が巻かれた腕を見る。
幸いにも太い血管や神経は傷つけられなかったようで、痛みはあるものの痺れや動かないといったことはない。