第4章 曇天に差し込む光
熱い。
寒い。
苦しい。
痛い。
気持ち悪い。
様々な不快な感情がサラを蝕む。
ぐるぐると闇に落ちていくような感覚の中、サラは誰かの声を聴いたような気がした。
しかし声は小さくあまりに頼りなく消えてしまう。気のせいだったか、とサラはまた闇に意識を沈ませようとして__
__ねぇ、
今度こそはっきりと聞こえた声にサラは目を開いた。
目の前に黒い影が立つ。
影なのにサラにはその顔がくっきりと見て取れた。
この辺りでは見なれない顔立ち。
知らないはずなのに知っている、彼女が誰かサラにはすぐに分かった。
__ねぇ、どうしてそんなに頑張るの?
『前世の私』は心底不思議そうにそう尋ねた。
__貴女が頑張らなくたって、物語は進んでいく。ラジは白雪に会って、ちゃんと変わるのに。
それはサラ自身も考えたこと。
『物語』にとってサラは異質だ。
定められた道筋を狂わせてしまうかもしれない存在。
物語を破綻させないために必要なことは、関わらないこと。